アメフクラガエルにサプリはいる?【なくても飼えます】

アメフクラガエルを飼う時に、ビタミンとカルシウムサプリっているのかな?

ふくら博士

このブログの結論は、『なくても飼えます。ですが気になる人は使うのがいい』です。

こんにちは。ふくら博士(自称・・・一応マジ博士(理学)です)

この記事では、なぜこれらの栄養素が足りないと言われているのかの理由を説明します。

その後で、アメフクラガエルの飼育にサプリメントが必要かどうか解説します。

この記事を読むと、爬虫類・両生類飼育でサプリメントが必要と言われている理由がわかります

また、アメフクラガエルを飼う時に、サプリメントを使うかどうかを決めやすくなります

目次

なぜ両生類・爬虫類の飼育に添加剤(サプリメント)を使うのか?

爬虫類・両生類飼育では、ビタミンDとカルシウム添加剤を使うことが主流となっています。

これは、どちらも足りないと骨の病気になりやすいからです。

でも、どのくらいの量が爬虫類や両生類で必要な量は調べられていません。

そこで、人や哺乳類でいわれている食べると望ましい量を当てはめると、爬虫類・両生類の餌の昆虫には足りないから、添加剤(サプリメント)としてビタミンDとカルシウムを与えているのが現状です。

ビタミンD

ビタミンDは、体へのカルシウムの吸収促進、血液の中のカルシウム濃度の調節、そして骨の成長促進の働きを持ちます。

このためビタミンDが不足すると骨がもろくなり、 子供ではくる病、大人では骨軟化症の原因となります。

ビタミンDの食事からの標準的な摂取量は、18歳以降の人間の男性で1日 8.5 μg(マイクログラム)と少ないですが、ビタミンDは太陽光(に含まれる紫外線)を浴びると体内で合成されます。

なので、強い紫外線が当たることでビタミンDを合成できますが、飼育下では強い太陽光にあたらないためビタミンDの合成が足りなくなります。

このため一部の爬虫類にはビタミンDをサプリメントで補ってあげることがとても有効です。

カルシウム

次にカルシウムについてです。ご存知のようにカルシウムは骨を作っている必須ミネラルで、骨の強さを保つのに重要です。(他にもたくさんの働きがあります)

カルシウムが不足すると、体に必要なカルシウムが骨から溶け出して補填されるので、骨が弱くなり、骨折しやすくなったり、骨粗しょう症になってしまったりします。

また、カルシウムは絶対量だけではなくとリン(燐)という栄養素との間のバランスが重要とされています。

というのも、血液の中でカルシウムとリンはうまくバランスをとっていますが、リンを摂取してしまうと血液中のリンが増加して骨からカルシウムが放出されてしまい骨が弱くなってしまうからです。

日本人では、カルシウム:リンの比率が1:0.5〜1:2が望ましいといわれているようです。

ただ、この比率はあまり明確な基準ではないようで(少なくとも実験的にも統計的にもこの基準が適切であるという証明した明確なエビデンスをみつけることはできませんでした。専門分野ではないので不勉強なだけかも💦)、実際の食事では1:3程度になる人もいるようです。

データをあげておくと、2019年の20-75歳までの日本人では、1日のカルシウム摂取量は 494 mg(ミリグラム)で、リンの摂取量は 948 mg(どちらも2,630人の平均)で、その比は 1:1.9となっています。

そして多くの昆虫餌は、このカルシウムが少なく、リンの比率が大きくなることがほとんどです。

例えば、カエルの餌で使われることが(おそらく)一番多いコオロギ(この場合はヨーロッパイエコウロギ=イエコ)については…

とある獣医の豪州生活IIさま*で引用されている Finke(2002) Zoo Biol. 27: 269-285によると、野生イエコの絶食状態のカルシウム組成は 41mg/100gで、カルシウム:リン比は1:7とのこと。

*必見のサイトです。エビデンスベースの考え方が学べます。

こういうわけで、カルシウムとリンの比率がリンに偏りすぎていて、カルシウムが少ないのでカルシウムを足さなければいけないというのが、サプリメントを使う理由です。

アメフクラガエルにサプリメントは必要?

まずこのブログでの大前提として、アメフクラガエルをはじめ10種類以上の両生類(サンショウウオとイモリを含みます)をコオロギだけを餌にして、ビタミンDとカルシウムのサプリメントを使わずに飼育してきましたが、5〜10年以上の長期飼育ができています。

このため経験則では、多くの両生類はサプリメントなしでコオロギだけでも問題なく飼育できるということになります。

(なお爬虫類についてはサプリが必要な種類が多いと思っていますので、ここでは特に述べません)

なぜ両生類ではサプリがなくても大丈夫なのか?

明確な理由は分かりません。

でも、推測はできます。ちょっと仮定が多いですが、次のような感じです。

ビタミンD

まずビタミンDですが、これはFinke(2002)でのコオロギでもその量が正確に推定できていません(水分を含んだままのコオロギ1kgに1μg未満)。

少し乱暴ですが、コオロギのビタミンDの量が1μg/kgとして計算すると、コオロギを食べたカエルのビタミンD摂取量は人間の推奨摂取量の25%ぐらいになります。

なぜビタミンDの摂取量が人間比で25%でも問題なく飼えているのか?

2つの理由が考えられます。

そもそも論になってしまいますが、両生類では人間と違って基準となるような栄養摂取量は決まっていません

このため、両生類は人間ほどビタミンDを必要としていない可能性があります。

多くのカエルはビタミンDの体内合成に必要な強い紫外線に当たらずに生活しています。このため、人間を含む哺乳類や爬虫類よりも少ないビタミンDでも特に問題は生じないという仮説を補強するように思えます。(逆に合成できないから餌で補っているとも考えられますが💦)

もう一つは、野生のコオロギよりも、日本で餌として使われているコオロギにはより多くのビタミンDが含まれている可能性です。

先の Finke(2002)のデータは、野生のコオロギを絶食させた状態で計測されたものです。

一方で、日本で餌として与えられるコオロギは、栄養価の高い飼料で育てられ、また絶食はさせずに腸の中に飼料が残っている状態です。

実際にコオロギのビタミンDの量を測ったデータはないのですが、少なくとも野生の絶食コオロギよりもビタミンDが多く含まれていることは十分ありえるでしょう。(実際に次のカルシウムではそうなっています。)

カルシウム

次にカルシウムについてです。

まずコオロギからの(カエルの)カルシウム摂取量は、人の基準でも少なすぎるとは思えません。

最近は昆虫食が注目されて、コオロギの栄養素も調べられています。

そして『コオロギには牛乳と同じぐらいカルシウムが含まれている』と言われます。

実際、コオロギを養殖しているスフィロアクアさまでの24時間絶食状態のイエコオロギの幼体のデータでは、コオロギ100gあたりのカルシウム量は 86 mg です。そして牛乳は 100g あたり125mg。ちょっと少ないけど、牛乳の2/3ぐらいのカルシウムは含まれているわけです。

さらにFinke(2002)では、コオロギだとカルシウムとリンの比率が1:7。これは人間の基準だと非常に悪いとかんがえられます。

でも、スフィロアクアさまのデータでは、イエコ幼体のカルシウムとリンの組成比は1:4。Finkeの野生イエコ(1:7)よりはるかにいい数字です。

しかも、飼育されているコオロギの餌に含まれるカルシウム:リンの比率は1:1。この飼料がコオロギの腸の中に残った状態でカエルに与えられるわけです。

これならば、より人間の基準の1:2(実際には1:3のこともある)に近づくのではないでしょうか?

また、一つ面白い例を出します。

野生のアメフクラガエルはシロアリを偏食しています。

そして、シロアリ(Macrotermes subhyalinus)のカルシウムとリンの比率は1:11です。1:4のコオロギなんて目じゃないほど圧倒的にリンの割合が多いのです。

つまり、アメフクラガエルの自然界での主食・シロアリは、リンとの比率で考えるとカルシウムぜんぜん足りないっすよ?てことになります。

このため、両生類がサプリメントなしでも問題なく飼育できる理由は、ビタミンDでの仮説と同じで、、、

(1)日本で餌として育てられているコオロギには十分かつリンとの比率も問題ない量のカルシウムが含まれている。

(2)両生類の場合、必要なカルシウムの量と最適なリンとの比率が人間とは違う

のではないかと推測できます。(1)と(2)両方かもしれないですね。

僕の経験からすると因果関係が違う

ちなみに僕は、小ガエルの時に多頭飼育すると餌を食べられない弱い個体が骨疾患になりやすいという経験はしています。(つまり与えている餌は同じコオロギだけど食べる量が違うと病気が出る

このため『餌の種類によって特定の栄養素が足りなくなる』という因果関係ではないように思えます。

むしろ『餌の量が少なく栄養素全般が足りないときには、特定の栄養素の不足が(他の症状や死亡するより先に)早くに症状として現れ、それがビタミンDやカルシウム不足で生じる骨疾患である』ということではないでしょうか?

これならロジックとして納得できます。

この場合は、餌の種類が悪いんじゃなくて餌を十分にあげてない飼い主が悪いということになりますね。

獣医さんがサプリが必要という理由は?

さて獣医さんが診る両生類は代謝性骨疾患の個体が多いでしょう。誰がみても症状が明確なので飼い主も連れて行きやすいですから。

そして哺乳類においては、代謝性骨疾患の原因はビタミンDやカルシウムの欠乏です。

なので獣医さんが両生類の代謝性骨疾患もビタミンDやカルシウムの不足によるものと考えるのも当然です。

でも、サプリを与える理由の『餌の昆虫にビタミンDやカルシウムが不足している』は、日本でいい飼料で育てられた上に腸にバランスのいい飼料が残っている(ガットローディングされた状態の)コオロギでは事実ではないように見えます。

また、『両生類に必要なビタミンBやカルシウムの量を人間の基準にあてはめて、餌のせいで両生類に代謝性骨疾患が多い』と判断していることはその妥当性が怪しいです。必要な栄養素の量や比率の基準が人間と両生類では違う可能性が高いからです。

さらにカルシウムやビタミンD以外が病気の原因になっていることもあるでしょうし、もともと(ある種の)両生類は栄養とか関係なしに骨疾患になりやすい可能性だってあるわけです。

まとめると?

結局のところ、カルシウムやビタミンDサプリが両生類の代謝性骨疾患の予防に有効かどうかは、十分な標本数を持つグループ間で検定をしないとわからないはずです

つまり、『サプリの使用の有り無し以外は全く同じ条件で飼育した沢山のカエルを調べて』、『サプリを与えなかった集団の方が病気になった数が統計学的に意味のあるレベルで(=有意に)多いか』を調べないといけないってことです。

こういう試験が実施されるまでは、『サプリに効果がある?それってあなたの感想ですよね?』ということになります。

むかし仕事で、ここ数年でとある爬虫類の死亡率が上がっているから原因を調べてほしい!と言われたことがあります。

そこで最初に、そもそも死亡率が本当に下がっているか?をしらべたら、別に死亡率下がってなかったということがありました。

少し立て続けに死んだ個体がいたみたいで飼育員さんが慌てたようです。

そう。人間って、根拠のないことを簡単に思い込んじゃうんですよ。(だからデータと経験と正しい情報が大事)

一方で僕の経験も『なくても長期間飼える』ことを示唆しているだけなので、サプリの病気予防効果を否定するものではありません。

また偉そうに言ったところで、僕だってサプリの有無で病気になる割合を比較していません。

そこで、僕の結論です。

サプリを使わなくても、『ちゃんとした飼料で育てられたコオロギ』を餌にするなら多くの両生類は長期飼育できます。

これは経験上の事実です。

でも、サプリは病気予防に役立っているかもしれませんし、使っても害はないと思われます(ビタミンDは多すぎると害があるかも…)

多くの獣医さんもおすすめしていることですし、使ったほうが安心できる人は使ったほうがいいと思います。

特にこれまでサプリメントを使っていてうまくいっているのであれば、その飼い方を変える必要はないと思います。

基本的に飼育においてうまくいっていることを変えるのはあまりいいことないですからね。

さて、今回は明確な答えを提示せずに申し訳ありません。

でも世間で言われていることを深掘りすると色f々見えてくることがあるんだな、と思っていただければ嬉しいです。

さて、この記事はフクラガエルからちょっと離れた記事になってしまいました。

他の記事やこれからの記事ではフクラガエルについてよりディープな情報をお届けしますので、どうぞお楽しみに!

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この記事を書いた人

フクラガエルの正しい知識を広めるために活動している者です。アメフクラガエルの飼育法決定版を書きました。ぜひ見てください。フクラガエルの生態や、野生のフクラガエルに会いに行くアフリカ旅行の記事も書きます。

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