フクラガエルってどんな生き物なのかな?
フクラガエルの説明に根拠があるのかしら?
フクラガエルの生態についてはさまざまな情報があります。でも、あまりまとまっていませんし、正しいとも限りません
こんにちはふくら博士(自称)です。
僕はフクラガエルが好きすぎて、20年ほどフクラガエルの調査や勉強をしています。
フクラガエル好きの方には、もっとフクラガエルのことが知りたいという人や、ネットで違う情報があるけど、どれが正しいのかわからないという方もいると思います。
そこで、この記事ではフクラガエルの生態について解説します。これを読めば今まで以上にフクラガエルについて詳しくなれます。
というか、フクラガエルの生態についてこれまでに知られていることのほぼ全てを知ることができる!といってもいいかも?
なお、ネットや本の情報は間違っていることがあるので(図鑑や教科書でも)、なるべくファクトチェックをしています。(僕の感想とか想像のところは、ちゃんとそのように書いています)
今回はフクラガエル全体の生態の話をします。種類ごとの詳細な説明はそれぞれ記事を書きます。
(準備中)➡️【フクラガエル図鑑】
この記事は長いですが、まとめだけなら1分で読み終わります。
ではどうぞ。
フクラガエルの生態まとめ【1分で読める】
フクラガエルは、フクラガエル属のカエルのことです。
20種類が知られています。
南部アフリカに分布しています。
雨季と乾季がある地域にすんでいる種類が多く、乾燥に適応していることが特徴です。
フクラガエルは夜行性です。また、『地中性』のカエルです。
土に潜って乾燥した季節をやり過ごします。雨季でも雨が降らずに乾燥している時は土の中にいます。
おそらく地中生活に適応した結果、丸い風船のような体と短い手足を持っています。
このような形態(形)のため、フクラガエルは後ろ足でジャンプできません。かわりに歩くか走ります。
また、フクラガエルは泳げません。(浮くことはできます)
大きさは、15〜80mm。種類によって違います。
餌は小動物。主に昆虫です。
糊を出して接着することで抱接(オスがメスを抱く繁殖行動)する変わった特徴を持っています。
地中に巣を作り(地中の巣を作らない種もいるらしい)、そこで繁殖します。
アメフクラガエルの寿命は10年以上です。他の種類は分かりません。
・・・知ってるよ!っていう人もいらっしゃる思います。
もっと知りたい人のためにより、ディープな情報をどうぞ!
フクラガエルの分類と種類数
分類
フクラガエルは、カエル目・カエル亜目・フクラガエル科・フクラガエル属(Breviceps)のカエルの総称です。
ちなみにヒメ(アマ)ガエル科のカエルであるという説明がときどき見られますが、2006年以降は一般的にフクラガエル科とされています。少なくとも系統学上はヒメアマガエル科には含まれません。
フクラガエル科は、クサガエル科・サエズリガエル科・クチボソガエル科と近く、これらの科とアフリカガエル類(Afrobatrachia)というアフリカにだけに生息するカエルの仲間とされています。
なかでもクチボソガエル科とは近縁であることがわかっています。
またフクラガエル科には、フクラガエル属以外に、アフリカシマガエル属(Spelaeophryne)、カクレガエル属(Callulina)、ムカシフクラガエル属(Probreviceps)、ワルフクラガエル属(Balebreviceps)という4つの属が含まれます。
種類数
現在のところ、フクラガエルには20種類の記載種(学名がついている種)が知られています。
さらにDNAに基づく調査から、少なくとも7種類の新種(名前のついていない種:未記載種)がいると考えられています。(Nielsen et al. 2018, J. of Biogeography 45: 2067)
実際に、僕も現地で4種類の名前のついていないフクラガエルを見ています。
調査が進めば、まだまだフクラガエルの種類は増えるでしょう。楽しみですね。。
フクラガエルの形態【形の特徴】
大きさ
フクラガエルの大きさは、最小でキノボリフクラガエル・オスが 15 mm。最大はケープオオフクラガエルのメスが80 mmになります。
ただ、もっと小さい種類もいて、未記載種には大人になっても1cmほどのものがいます。
ちなみに、カエルの大きさは鼻の先から総排泄口までの長さ(Snout-Vent Length: SVL)で測ります。
アメフクラガエルはオス・メスのサイズが平均でおよそ 35 mmと50 mm、メスは最大で60 mmになるとされており、フクラガエルの中では大きめ種類になります。
西沢雅氏は、『3cm以上ある個体は全てメス』と書かれています [REPFAN vol.19, 笠倉出版社 (2023) p.103]。うーん、これはどうでしょう。オスももう少し大きいと思いますが・・・。今度測ってみます。
形態の特徴
頭が短い
フクラガエルは全ての種類で吻(鼻先から口元まで)が短いことが特徴です。このため、吻が長いカエルと比べて、『平たい顔』をしています。
これはいわゆる『短頭』という特徴です。例えば犬のパグやフレンチブルドックのような鼻ぺちゃな種類を短頭犬種といいます。
この『短頭』という特徴がフクラガエル属の学名・ Breviceps(ラテン語で短い頭の意味)の由来になっています。
Breviceps と初めて名付けられたカエルはケープオオフクラガエルです(Bveviceps の属模式種)。なるほど、頭が短いですね。
体が丸い
フクラガエルの形の特徴は、なんといってもあの風船のように丸い体と、体に対して短すぎる手足でしょう。
この奇妙な(可愛らしい)体は地中の生活に適応したものだと考えられています。
地中では長い手足は無意味、むしろ邪魔になると思われるので、手足が短いことは納得です。
ではなぜ体が丸いのでしょうか?
僕は不勉強なので、丸い体が地中の生活に有利であるという具体的な理由を見たり聞いたりしたことがありません。(もしご存知の方はぜひ教えてください)
ただ、地中性のカエルのには丸い体を持つ種類がよく見られるので、なんらかの意味があるのはまちがいなさそうです。
例をあげると、アジアジムグリガエル、インドハナガエル、ジュウジカガエルの仲間などが地中性の丸いカエルです。
とくに、ジュウジカガエル全く近縁な仲間ではないのに、フクラガエルとそっくりです。(色が派手なフクラガエルという感じです)
ここで、なぜフクラガエル(と一部の地中性のカエル)が丸いのかを、もっともらしく考察してみます。
まず、地中に潜る時には丸くて出っ張りがない体はメリットに思えます。
さらに『球』は体積が同じ物体の中では表面積が最小になります。
地中に潜る時は表面積が少ない方がいいでしょう。また、地中性のカエルは地中に長く留まるので、栄養(脂肪体)や水分を貯めておく必要があります。この時、体積が大きいのは大きなアドバンテージだと考えられます。
つまり、フクラガエルの丸い体は表面積を少なくしつつ、貯蔵量を大きくできるという地中生活をする上での2つのメリットから生まれたものかもしれませんね。(あくまで個人の考察です)
手足が短くジャンプできない泳げない。後ろ足はスコップ状になっている
フクラガエルはからでに対して手足がとても短く、普通のカエルのようにジャンプできません。代わりに歩くか走ります。
飼育していると、動く時はほとんど歩いていますが、逃げる時などは走ったりします。走ったときは体型から連想するよりはだいぶ早いです。
同じく泳ぐこともできません。体が丸く浮力も高いし足で水をかくこともできないので、水に潜ることができないのです。
サバクフクラガエルとナマクワフクラガエルには水かきがあります。しかし、それ以外のフクラガエルの水かきは退化しています。
フクラガエルを水の上におくと、プカプカ浮いて手足をバタバタさせますがほとんど進みません。
余談ですが、南アフリカでは雨季の初めのフクラガエルが大量に地上に出てくる時、よくプールで溺れているそうで、網ですくって助けてあげるそうです。(プールがある家が多いです)
フクラガエルの後ろ足はジャンプや泳ぎには適していませんが、地中生活には適した形をしています。
足の裏にでっぱり(内蹠隆起といいます)があり、これをスコップのように使うことで、うまく穴を掘れるようになっています。
フクラガエルの分布と気候
フクラガエルはアフリカ大陸南部の広い地域に分布しています。
具体的にはアンゴラ・コンゴ民主共和国・タンザニア以南の地域に住んでいます。
これらの地域には気候区分において、熱帯(サバナ気候)、乾燥帯(ステップ気候・砂漠気候)、温帯(温暖冬季少雨量気候・温暖湿潤気候・西岸海洋性気候・地中海性気候)を含んでいます。
このため、それぞれの気候区には別の種類のフクラガエルが住んでいます。
違う気候区に住んでいるフクラガエルは、このましい温度や湿度が大きく異なると予想されます。
フクラガエルの分布は、乾季と雨季がある地域が多いことが特徴です。
気候図を見ると、フクラガエルの分布地の中でも乾季がある地域の『緑・薄緑(温暖冬季少雨量気候)・オレンジ色(ステップ気候)・水色(サバナ気候)の地域』が大きな面積を占めています。
面白いことに、フクラガエルは砂漠気候にも分布しますが、その中でも年間平均気温が18℃以下の地域かつ海沿い(海から10 km以内)に限られ、内陸部や年間平均気温の高い砂漠地域には分布していません。
これらの地域では海からの水蒸気が結露し、フクラガエルに生存可能な水分が供給されていると思われます。
実際にサバクフクラガエルの分布する海沿いの砂漠地域では、僕が実測したところ、夜は14℃まで気温がさがり、霧が出て湿度が90%以上ありました。
いずれにしても、分布パターンから、フクラガエルが多くの両生類が苦手とする乾燥に対して適応していることは明らかです。
そして確かに、乾燥に適した数多くの特徴をもっています(乾燥への適応)。
フクラガエルの生態
餌
フクラガエルの餌は、小動物、おもに節足動物です。主にアリやシロアリを食べるといわれます。これはアメフクラガエルでは正しいです。(おそらく同じ気候に住んでいるフクラガエルも同じです)
アメフクラガエルが分布している乾燥地域にはアリ塚を作るタイプのシロアリも多く分布しています。
数も相当におり、街中でもアリ塚が見られます。しかもちょうどフクラガエルが地上に現れる雨季にシロアリも地上で盛んに活動します。
このためアメフクラガエルにとってシロアリはとても食べやすい餌なのでしょう。
シロアリがいない地域に分布している種類は、その地域にいる食べやすい餌を食べているようです。
例えば、サバクフクラガエルは蛾や甲虫、その他昆虫の幼虫を食べていると言われています。
つまり、分布している地域で食べやすいものを食べていることになります。
外敵からの防御
体を膨らませる
フクラガエルは捕食者などの外敵(とカエルが認識しているもの)には体を膨らませ、自分を大きく見せて威嚇します。
フクラガエルの昔の英語名に Blaasops というのがあります。これはフグ(科の魚)という意味でフクラガエルが丸く膨らむ特徴をうまく表した名前だと思います。
でも、膨らむのは人間から見るとただ『可愛いだけ』で効果はありません。またフクラガエルの捕食者(鳥・ヘビなど)に対してもあまり効果があるとは思えません。
フクラガエルは肺を膨らませて丸くなります。フクラガエルの肺はよく発達していて体の後ろの方までのびています。
ちなみにフクラガエルはオス同士でケンカをする種類がいますが、この時には体はふくらませません。
鳴く
フクラガエルは、危機を感じると『キュッ!』と鳴くことがあります。
これは、危難音と呼ばれる鳴き声です。口を開けて出すのが危難音の特徴といわれています。[他の鳴き声は鳴き袋(鳴嚢)を膨らませて出します]
サバクフクラガエルが危難音をだして威嚇をしている動画(⬇️)が話題になり、サバクフクラガエルは世界一可愛いカエルと言われるようになりました。
最初に撮影者のDeanくんがナマクワフクラガエルと間違えて書いていたので、未だにこれがナマカだと思っている人が多いですが、実はこのカエルはサバクフクラガエルです。
このように危難音はあまり役に立たない(特に人間には)ようです。
なお、アメフクラガエルやほとんどのフクラガエルは、触った時などに短く『キュッ』と鳴きますが、動画のように危難音を出し続けることはほとんどありません。(よほどのことがあれば出しますので、能力は持っています)
サバクフクラガエルとは10頭ほど遭遇しましたが、鳴く個体はいませんでした。
このため、可愛いく『キューキュー』鳴く様子は、たまたまそういう個体と出会ったために撮影できた『奇跡の動画』といえるでしょう。
糊を出す
両生類には、危機を感じた時に(とくに捕食者に食べられそうな時に)糊(のり:接着性の物質)をだして防御に使う種類がいます。
一応アメリカサンショウウオの仲間がだす糊は、サンショウウオを食べた蛇を動けなくするぐらいの効果があるとされています。(自分は死んでしまうのですが)
フクラガエルも糊を持っていて捕まりそうになると、ある程度の割合でこの糊を出します。(ちゃんとデータは取っていませんが、アメフクラガエルでおおよそ20頭に1匹ぐらいでした)
フクラガエルの仲間のカクレガエルやワルフクラガエルも捕まりそうになると糊を出すといわれているので、接着剤を出して防御を行うという特徴はフクラガエル科の祖先で現れた特徴の可能性が高いです。
ただフクラガエルではあまり積極的に防御には使われておらず、ちがう役割に転用されているようです。
➡️ フクラガエルの繁殖
乾燥への適応
両生類としてのフクラガエル最大の特徴は、乾燥に適応していることでしょう。
まずは、地中生活をするという点です。
フクラガエルは湿度の保たれた地中で、雨がほとんど降らない乾季を乗りこえるという生態をもっています。
この生活を実現するためには、地中にいる時の水分を確保する必要があります。
このために、乾燥地域に分布するフクラガエルは、水を効率よく吸収するためにお腹側の皮膚(普通のカエルも主にお腹の皮膚から水を吸収します)がとくに薄くなっています。
面白いことにフクラガエルのお腹の皮膚の薄さは、それぞれのフクラガエルが生活する地域の乾燥の強さと関係しています。
湿ったところに住む種類ではあまり肌が薄くなく、砂漠に住んでいる種類はお腹全体の皮膚がとても薄く、アメフクラガエルやナマクワフクラガエルのようにあるていど乾燥している地域の種類は中程度の薄さを持っています。
一般にカエルの皮膚は水を吸収するために薄く、水を通しやすいので、暑く乾燥した気候ではすぐに体から水分が奪われます。
このため乾燥地域に生活するカエルは、基本的には川や池などの水から離れられません。そこで水辺から離れて生活をするカエルの種類は乾燥に対するさまざまな対策をとっています。
特に面白いのは南米のネコメガエルの仲間やアフリカのハイイロモリガエルの仲間です。
これらのカエルは、体に水を通さないワックス(蝋エステル)を塗り、体から水分が出ていくのを防ぎます。代わりに、皮膚から水分を吸収できないので、口から水を飲むとされています。
フクラガエルは、地中に潜ることで体から水分が奪われることを避けると同時に、お腹の皮膚を薄くし、より水分を吸収しやすくする、という生態を進化させてきました。
その結果、他のカエルが生存できないような砂漠にまで分布地を広げることに成功したのでしょう。
しかし、カエルは卵から孵化した後にはオタマジャクシになります。そしてオタマジャクシは水の中で生活します。
では、水のない砂漠などでフクラガエルはどうやって繁殖しているのでしょうか。
ここにもフクラガエルの大きな特徴があります。
フクラガエルの繁殖
始めにフクラガエルの繁殖の様式をまとめます。
- オスとメスが糊で接着することで抱接する
- 抱接した状態で地中(もしくは岩や倒木の下)に潜りくぼみ状の巣をつくる
- 卵を産み授精する
- メスがゼリーカプセル(卵が入っていない卵ゼリー)を追加で産んで卵の上にのせる
- オタマジャクシが孵化する
- オタマジャクシが動き回り、ゼリーカプセルをかき混ぜて泡状のマットができる
- 泡マットの中でオタマジャクシが育ち、変態する
- 産卵から6-8週間後に変態が完了し地上に出てくる
・・・なんといいますか、特徴だらけです。
糊で接着して抱接する
多くのカエルではオスがメスを腕で抱きかかえて抱接をします。
しかし、フクラガエルはメスが大きくオスが小さく、さらに腕が短いという特徴を持っています。
このため、大きくて丸いメスをオスが腕で抱くことができません。
ではどうするかというと、フクラガエルでは糊で接着することで抱接を行います。
この糊は、フクラガエルが抱接をするために進化したものではなく、もともとは外的から身を守るために使っていた糊を生殖行動に転用したものと考えられます。
なお、オスが出す糊だけで抱接はできます。でもメスも糊をもっています。特に必要ないのにメスも糊をもっていることも、糊が防御行動のためのものから生殖行動に転用された証拠の一つです。
ちなみに、糊の接着力はおよそ 500 g/cm2で、ベルクロ(スニーカーなどのベリベリ。面ファスナー)と同じぐらいされています。
また、フクラガエルも他のカエルと同じようにオスが広告音をだしてメスを引き寄せます。このため、地中ではなく、地上でオスメスが出会い抱接します。
➡️ 広告音については(Wikipediaの「カエル」を参照してください)
次の章で説明しますが、フクラガエルは抱接したまま地中に潜って巣を作ります。
糊で接着するという性質は、抱接したまま地中に潜るフクラガエルのペアが、地中で離れないようにするために役立っているのかもしれません。(地中で離れてしまうと再び会えない可能性が高そうなので。証拠はなく、文献でも見たことのない個人の感想です)
地中に巣を作って産卵する
多くのカエルは水の中に卵を生みます(湿潤な地域のカエルには地表や、樹木のうろ・葉などに産むものもいます)。
しかしフクラガエルは包摂したまま地中(もしくは岩や木の下)に潜り、そこに巣をつくって産卵します。
地中に巣を作って産卵するカエルは珍しいですが、フクラガエルに近い仲間のクチボソガエルも地中の巣で産卵します。
一方でフクラガエルはただ土の中に産卵するだけではなく、水のない状態でもオタマジャクシが生存できるように、卵の上に卵の入っていないゼリーカプセルを追加で産み、を卵のかたまり(卵塊)に重ねておきます。
卵から孵化したオタマジャクシは活発に動き回ることで、ゼリーカプセルをかき混ぜられて、泡のマットができます。(孵化の時にオタマジャクシがゼリーを溶かす酵素出していると考える人もいます)
この泡マットの中でオタマジャクシが育ち、最終的には小ガエルになります(オタマジャクシからカエルになることを変態すると言います)。
この一連の様子が、BBCの動画に写っています。
なお、卵が生まれてから変態が終わるまでは、おおよそ6〜8週間とされています。
オタマジャクシの間は何も食べずに、卵黄(卵の黄身)の栄養だけで育ちます。
この卵黄のため、フクラガエルの卵はアメフクラガエルの場合でおよそ5mm(卵を包んでいるゼリーカプセルを含めると1cmに達することも)。カエルの卵としてはとても大きいものです。
代わりに、メスが一度に産む卵の数は20〜50個程度で、カエルとしては少ないものとなっています。(典型的なK戦略)
変態した子ガエルは地上に出て、すぐに餌を食べ始めます。ちいさな昆虫などを餌として食べます。(初令のコオロギほどの大きさなら食べられるようです)
フクラガエルの繁殖方法の進化
地中に卵を産むのは乾燥対策ということもあるかもしれませんが、むしろ外敵から身を守るための対策だったように思えます。
というのも、近い仲間のクチボソガエルの場合、土の中の巣で卵を産み、そこで孵化してオタマジャクシになるところまではフクラガエルと同じです。
でも、クチボソガエルは池のそばに住んでおり、メスがオタマジャクシを水場に運ぶのです。
つまり、以下のような進化のプロセスが推定できます。(同じアイデアの文献は読んだことがありません。僕個人の想像です)
- 水場の近くに住んでいたクチボソガエルとフクラガエルの祖先で、穴を掘って巣をつくり産卵するという特徴ができた
- これはおそらく外敵から産卵中の親や卵を身を守るために有利な方法だった
- この祖先は、オタマジャクシを水場まで運ぶという行動をもっていた
- クチボソガエルはこの祖先の特徴を受けついだ
- フクラガエルはオタマジャクシを運ぶことをやめ、代わりに卵にゼリーを産んで泡状のマットを作るという特徴を進化させた
- その結果、フクラガエルは水場なくてもオタマジャクシを成長させることができ、(ライバルの少ない)乾燥地域に分布を広げることができるようになった
このシナリオが正しいなら、フクラガエルの繁殖のおける乾燥適応の本当の特徴は、卵ゼリーで作られる泡マットということになります。
また、地中の巣で子ガエルまで成長できるという特徴は、オタマジャクシが外敵の多い水場で成長しなくて済むため、変態終了までのオタマジャクシの生存率を高めることにもつながっているでしょう。
フクラガエルが直接発生をすると言う誤解
日本を含め世界全体で見ても、フクラガエルは卵から小ガエルで生まれる『直接発生』をすると誤解されていることが多いです。
なぜそうなったのかを考察しましたので、興味がある方は、【フクラガエルが小ガエルで生まれる説を検証】をご覧ください。
フクラガエルの寿命【愚痴が多い】
最後はフクラガエルの寿命についてです。
結論は、アメフクラガエルの寿命は10年以上ある。です。
僕が調べた範囲では、フクラガエルの寿命が書かれた学術論文はありません。また、動物園や水族館の飼育記録も見つかりませんでした。
でもネットを見るといろいろな情報があります。
だいたい10年ぐらいという情報が多いですね。
おそらく、上手な飼い主さんの飼育経験から10年は生きるという情報が広まっているのでしょう。
僕たちもアダルトを購入し8年飼育しています。そしてアメフクラガエルの成熟は早くてオスで1年・メスは2年です。
このため卵から数えるなら僕たちが飼っているオス(7頭)は最低9年、メス(13頭)は最低10年間生きています。
このため、アメフクラガエルの寿命が10年以上であることは間違いありません。
海外のサイトでは、アメフクラガエルの寿命を4〜8年(pictureanimal.com)とするものや、15〜16年(AmphibianFact)とするものもありますが、いずれも根拠はありません。
ちなみに、日本のサイトには『(ニホン)アマガエルやトノサマガエルなどの一般的なカエルの寿命が5年ぐらいなのに対して』アメフクラガエルは長生き、という枕詞が必ずと言っていいほど出てきます。
実際は、アマガエルやトノサマガエルも余裕で10年以上生きますので、この枕詞は余計な上に事実でない情報です。
これはコピペの結果でしょうね。
誰かが『アマガエルとかトノサマガエルより長生きする』と適当に書いて、それを多くの人が真似したのでしょう。
ネット上の情報をちょっとだけリライトして信頼性のない記事を量産するブロガーさんやライターさんが多すぎ。
しっかりファクトチェクして書いて欲しいものです。
(そんなサイトばかりが検索上位に来るペット業界はかなりヤバイですね・・・業者さんは儲かるからいいのか)
ちなみに、ChatGPTに調べさせてもWeb上にある適当な数字しか答えしかくれません。おまけに根拠を聞くと『この論文に書いてあります』とか嘘をつきます。(書いてねーよ!読んだことある論文だよ!みたいな。。)
今のところ、 AIも1次情報までは調べてくれないですね・・・それより誤情報を返してくるのはほんとやめて欲しいです。
余談はともかく、、、
アメフクラガエル以外のフクラガエルの寿命はどうなのか?ということですが、これはよく分かりません。
ネット上ではいくつか記述がありますがまとめてみると、
サイト名 | 寿命 | サイト |
---|---|---|
ヤミフクラガエル | 4〜15年 | Wikipedia(引用文献あり。でもその論文には寿命の記述なし) |
コビトフクラガエル | 4〜15年 | Wikipedia(根拠なし) |
サバクフクラガエル | 8〜12年 | FACT.net(根拠なし) |
サバクフクラガエル | 4〜14年 | Wikipedia(根拠なし) |
こんな感じです。
ほら、これも伝言ゲームみたいですよね。どこかの誰かが4〜15年と書いて、それを適当に真似して書いた気がしませんか?
ヤミフクラかサバクフクラの年齢を骨の成長線で調べたら4〜15年だったという研究があって、それから伝言ゲームが始まった、というのがありそうなストーリーです。
残念ながら、僕が調べられる範囲ではこれらのフクラガエル寿命や年齢が書いてある飼育記録や論文はありませんでした。
そのため4〜15年とかの数字がどこからでてきたのか分かりません。
特にコビトフクラガエルなんて2003年に新種記載されてますから、Wikipediaが正しいとすると新種発表から6年以内に飼育が始まって最長15年間飼育できたっていうことですよ?凄すぎじゃないですか?
ついでに言うと、コビトフクラガエルは最大でも3cm未満のカエルで15年も生きるとは考えにくいのですが…。
でもまあ、私が知らないだけで本当にそれぐらいの寿命なのかもしれません。根拠のないことを言うのはやめましょう。
そんなこんなで、最後にフクラガエルの寿命をまとめます。
フクラガエルの寿命は種類によって違うと思われます。しかし根拠がないのでわかりません。
明確な証拠があるのは、アメフクラガエルは10年以上生きるということだけ。
となります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
僕が知っている限り、フクラガエルの生態について書いてみました。
皆さんの知りたい!と言う気持ちが満たされているといいのですが。
もしさらに知りたいことがあれば、問い合わせから尋ねてみてください。面白そうなことであれば調べて記事を書きます。
なお、このブログではちゃんと情報の裏取りをしているので他のサイトとはデータの信頼性がちがいます。
他のサイトに違うことが書いてあったら、このブログの方を信じていただいて大丈夫だと思います。
なお、今回はフクラガエル全体のお話はしましたが、種類ごとの話も書いていく予定です。
興味のある方はぜひご覧になってみてください。
(準備中)➡️【フクラガエル図鑑】
では次の記事でお会いしましょう!
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