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フクラガエルの生物学【生態・分類・特徴を解説します】

フクラガエルってどんな生き物なのかな?

フクラガエルの説明に根拠があるのかしら?

ふくら博士

フクラガエルの生態についてはさまざまな情報があります。でも、あまりまとまっていませんし、正しいとも限りません

こんにちはふくら博士(自称)です。

僕はフクラガエルが好きすぎて、20年ほどフクラガエルの調査や勉強をしています。

フクラガエル好きの方には、もっとフクラガエルのことが知りたいという人や、ネットで違う情報があるけど、どれが正しいのかわからないという方もいると思います。

そこで、この記事ではフクラガエルの生態について解説します。これを読めば今まで以上にフクラガエルについて詳しくなれます。

というか、フクラガエルの生態についてこれまでに知られていることのほぼ全てを知ることができる!といってもいいかも?

なお、ネットや本の情報は間違っていることがあるので(図鑑や教科書でも)、なるべくファクトチェックをしています。(僕の感想とか想像のところは、ちゃんとそのように書いています)

今回はフクラガエル全体の生態の話をします。種類ごとの詳細な説明はそれぞれ記事を書きます。

(準備中)➡️【フクラガエル図鑑】

この記事は長いですが、まとめだけなら1分で読み終わります。

ではどうぞ。

目次

フクラガエルの生態まとめ【1分で読める】

フクラガエルは、フクラガエル属のカエルのことです。

20種類が知られています。

南部アフリカに分布しています。

雨季と乾季がある地域にすんでいる種類が多く、乾燥に適応していることが特徴です。

フクラガエルは夜行性です。また、『地中性』のカエルです。

土に潜って乾燥した季節をやり過ごします。雨季でも雨が降らずに乾燥している時は土の中にいます。

おそらく地中生活に適応した結果、丸い風船のような体と短い手足を持っています。

このような形態(形)のため、フクラガエルは後ろ足でジャンプできません。かわりに歩くか走ります。

また、フクラガエルは泳げません。(浮くことはできます)

大きさは、15〜80mm。種類によって違います。

餌は小動物。主に昆虫です。

糊を出して接着することで抱接(オスがメスを抱く繁殖行動)する変わった特徴を持っています。

地中に巣を作り(地中の巣を作らない種もいるらしい)、そこで繁殖します。

アメフクラガエルの寿命は10年以上です。他の種類は分かりません。

・・・知ってるよ!っていう人もいらっしゃる思います。

もっと知りたい人のためにより、ディープな情報をどうぞ!

フクラガエルの分類と種類数

分類

フクラガエルは、カエル目・カエル亜目・フクラガエル科・フクラガエル属(Breviceps)のカエルの総称です。

ちなみにヒメ(アマ)ガエル科のカエルであるという説明がときどき見られますが、2006年以降は一般的にフクラガエル科とされています。少なくとも系統学上はヒメアマガエル科には含まれません。

フクラガエル科は、クサガエル科・サエズリガエル科・クチボソガエル科と近く、これらの科とアフリカガエル類(Afrobatrachia)というアフリカにだけに生息するカエルの仲間とされています。

なかでもクチボソガエル科とは近縁であることがわかっています。

マダラクチボソガエル(Hemisus marmoratus

またフクラガエル科には、フクラガエル属以外に、アフリカシマガエル属(Spelaeophryneカクレガエル属(Callulinaムカシフクラガエル属(Probrevicepsワルフクラガエル属(Balebrevicepsという4つの属が含まれます。

種類数

現在のところ、フクラガエル属には20種類の記載種(学名がついている種)が知られています。

➡️フクラガエル全20種類の名前リスト

さらにDNAに基づく調査から、少なくとも7種類の新種(名前のついていない種:未記載種)がいると考えられています。(Nielsen et al. 2018, J. of Biogeography 45: 2067

実際に、僕も現地で4種類の名前のついていないフクラガエルを見ています。

調査が進めば、まだまだフクラガエルの種類は増えるでしょう。楽しみですね。。

フクラガエルの形態【形の特徴】

大きさ

フクラガエルの大きさは、最小でキノボリフクラガエル・オスが 15 mm。最大はケープオオフクラガエルのメスが80 mmになります。

ただ、もっと小さい種類もいて、未記載種には大人になっても1cmほどのものがいます。

キノボリフクラガエル(Breviceps sopranus
ケープオオフクラガエル(Breviceps gibbosus

ちなみに、カエルの大きさは鼻の先から総排泄口までの長さ(Snout-Vent Length: SVL)で測ります。

アメフクラガエルはオス・メスのサイズが平均でおよそ 35 mmと50 mm、メスは最大で60 mmになるとされており、フクラガエルの中では大きめ種類になります。

西沢雅氏は、『3cm以上ある個体は全てメス』と書かれています [REPFAN vol.19, 笠倉出版社 (2023) p.103]。うーん、これはどうでしょう。オスももう少し大きいと思いますが・・・。

測ってみたら 35 mm でした。

形態の特徴

頭が短い

フクラガエルは全ての種類で吻(鼻先から口元まで)が短いことが特徴です。このため、吻が長いカエルと比べて、『平たい顔』をしています。

これはいわゆる『短頭』という特徴です。例えば犬のパグやフレンチブルドックのような鼻ぺちゃな種類を短頭犬種といいます。

この『短頭』という特徴がフクラガエル属の学名・ Breviceps(ラテン語で短い頭の意味)の由来になっています。

Breviceps と初めて名付けられたカエルはケープオオフクラガエルです(Bveviceps の属模式種)。なるほど、頭が短いですね。

体が丸い

フクラガエルの形の特徴は、なんといってもあの風船のように丸い体と、体に対して短すぎる手足でしょう。

この奇妙な(可愛らしい)体は地中の生活に適応したものだと考えられています。

地中では長い手足は無意味、むしろ邪魔になると思われるので、手足が短いことは納得です。

ではなぜ体が丸いのでしょうか?

僕は不勉強なので、丸い体が地中の生活に有利であるという具体的な理由を見たり聞いたりしたことがありません。(もしご存知の方はぜひ教えてください)

ただ、地中性のカエルのには丸い体を持つ種類がよく見られるので、なんらかの意味があるのはまちがいなさそうです。

例をあげると、アジアジムグリガエル、インドハナガエル、ジュウジカガエルの仲間などが地中性の丸いカエルです。

とくに、ジュウジカガエル全く近縁な仲間ではないのに、フクラガエルとそっくりです。(色が派手なフクラガエルという感じです)

ジュウジカガエルNotaden bennettii):J.J. Harrison: Crucifix Frog, Lake Cargelligo, New South Wales, Australia. CC BY 3.0

ここで、なぜフクラガエル(と一部の地中性のカエル)が丸いのかを、もっともらしく考察してみます。

まず、地中に潜る時には丸くて出っ張りがない体はメリットに思えます。

さらに『球』は体積が同じ物体の中では表面積が最小になります。

地中に潜る時は表面積が少ない方がいいでしょう。また、地中性のカエルは地中に長く留まるので、栄養(脂肪体)や水分を貯めておく必要があります。この時、体積が大きいのは大きなアドバンテージだと考えられます。

つまり、フクラガエルの丸い体は表面積を少なくしつつ、貯蔵量を大きくできるという地中生活をする上での2つのメリットから生まれたものかもしれませんね。(あくまで個人の考察です)

手足が短くジャンプできない泳げない。後ろ足はスコップ状になっている

フクラガエルはからでに対して手足がとても短く、普通のカエルのようにジャンプできません。代わりに歩くか走ります。

飼育していると、動く時はほとんど歩いていますが、逃げる時などは走ったりします。走ったときは体型から連想するよりはだいぶ早いです。

サバクフクラガエル(Breviceps macrops)が歩く様子

同じく泳ぐこともできません。体が丸く浮力も高いし足で水をかくこともできないので、水に潜ることができないのです。

サバクフクラガエルとナマクワフクラガエルには水かきがあります。しかし、それ以外のフクラガエルの水かきは退化しています。

フクラガエルを水の上におくと、プカプカ浮いて手足をバタバタさせますがほとんど進みません。

余談ですが、南アフリカでは雨季の初めのフクラガエルが大量に地上に出てくる時、よくプールで溺れているそうで、網ですくって助けてあげるそうです。(プールがある家が多いです)

フクラガエルの後ろ足はジャンプや泳ぎには適していませんが、地中生活には適した形をしています。

足の裏にでっぱり(内蹠隆起といいます)があり、これをスコップのように使うことで、うまく穴を掘れるようになっています。

カナシフクラガエル(B. verrucosus)の内蹠隆起

フクラガエルの分布と気候

フクラガエルはアフリカ大陸南部の広い地域に分布しています。

具体的にはアンゴラ・コンゴ民主共和国・タンザニア以南の地域に住んでいます。

フクラガエルの分布(分布域は  Du Preez, L. & Carruthers, V. 2017 “Frogs of Southern Africa” より)

これらの地域には気候区分において、熱帯(サバナ気候)、乾燥帯(ステップ気候・砂漠気候)、温帯(温暖冬季少雨量気候・温暖湿潤気候・西岸海洋性気候・地中海性気候)を含んでいます。

このため、それぞれの気候区には別の種類のフクラガエルが住んでいます。

違う気候区に住んでいるフクラガエルは、このましい温度や湿度が大きく異なると予想されます。

フクラガエルの分布域と気候区分 ⭐️の気候区分にはフクラガエルが分布
World Köppen Map.png: Peel, M. C., Finlayson, B. L., and McMahon, T. A.
(University of Melbourne) CC-BY-3.0 を改変

フクラガエルの分布は、乾季と雨季がある地域が多いことが特徴です。

気候図を見ると、フクラガエルの分布地の中でも乾季がある地域の『緑・薄緑(温暖冬季少雨量気候)・オレンジ色(ステップ気候)・水色(サバナ気候)の地域』が大きな面積を占めています。

面白いことに、フクラガエルは砂漠気候にも分布しますが、その中でも年間平均気温が18℃以下の地域かつ海沿い(海から10 km以内)に限られ、内陸部や年間平均気温の高い砂漠地域には分布していません。

これらの地域では海からの水蒸気が結露し、フクラガエルに生存可能な水分が供給されていると思われます。

実際にサバクフクラガエルの分布する海沿いの砂漠地域では、僕が実測したところ、夜は14℃まで気温がさがり、霧が出て湿度が90%以上ありました。

いずれにしても、分布パターンから、フクラガエルが多くの両生類が苦手とする乾燥に対して適応していることは明らかです。

そして確かに、乾燥に適した数多くの特徴をもっています(乾燥への適応)。

フクラガエルの生態

フクラガエルの餌は、小動物、おもに節足動物です。主にアリやシロアリを食べるといわれます。これはアメフクラガエルでは正しいです。(おそらく同じ気候に住んでいるフクラガエルも同じです)

アメフクラガエルが分布している乾燥地域にはアリ塚を作るタイプのシロアリも多く分布しています。

シロアリの蟻塚とアメフクラガエル(フクラが乗っているのはやらせです)
モドリフクラガエル分布地のシロアリと巣

数も相当におり、街中でもアリ塚が見られます。しかもちょうどフクラガエルが地上に現れる雨季にシロアリも地上で盛んに活動します。

このためアメフクラガエルにとってシロアリはとても食べやすい餌なのでしょう。

シロアリがいない地域に分布している種類は、その地域にいる食べやすい餌を食べているようです。

例えば、サバクフクラガエルは蛾や甲虫、その他昆虫の幼虫を食べていると言われています。

つまり、分布している地域で食べやすいものを食べていることになります。

外敵からの防御

体を膨らませる

フクラガエルは捕食者などの外敵(とカエルが認識しているもの)には体を膨らませ、自分を大きく見せて威嚇します。

フクラガエルの昔の英語名に Blaasops というのがあります。これはフグ(科の魚)という意味でフクラガエルが丸く膨らむ特徴をうまく表した名前だと思います。

でも、膨らむのは人間から見るとただ『可愛いだけ』で効果はありません。またフクラガエルの捕食者(鳥・ヘビなど)に対してもあまり効果があるとは思えません。

フクラガエルは肺を膨らませて丸くなります。フクラガエルの肺はよく発達していて体の後ろの方までのびています。

ちなみにフクラガエルはオス同士でケンカをする種類がいますが、この時には体はふくらませません。

鳴く

フクラガエルは、危機を感じると『キュッ!』と鳴くことがあります。

これは、危難音と呼ばれる鳴き声です。口を開けて出すのが危難音の特徴といわれています。[他の鳴き声は鳴き袋(鳴嚢)を膨らませて出します]

サバクフクラガエルが危難音をだして威嚇をしている動画(⬇️)が話題になり、サバクフクラガエルは世界一可愛いカエルと言われるようになりました。

最初に配信者のDeanくんがナマクワフクラガエルと間違えて書いていたので、未だにこれはナマクワ(ナマカ)だと思っている人が多いですが、このカエルはサバクフクラガエルです。

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この記事を書いた人

フクラガエルの正しい知識を広めるために活動している者です。アメフクラガエルの飼育法決定版を書きました。ぜひ見てください。フクラガエルの生態や、野生のフクラガエルに会いに行くアフリカ旅行の記事も書きます。

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