一番派手なフクラガエルってなにかな?
イチゴフクラガエル(Breviceps acutirostris Poynton, 1963)はかなり派手ですね
こんにちは。ふくら博士(自称)です。
日本人で一番多くのフクラガエル種を見てきた僕がフクラガエルの各種類について解説するこのシリーズ。
今回は5回目として、フクラガエルにしては珍しく原色が入っているちょっと派手目なイチゴフクラガエルについて解説します。
ではいってみましょう!
イチゴフクラガエルの名前
学名
イチゴフクラガエルの学名は
Breviceps acutirostris
です。
属名の Breviceps のとは、『短い頭』というラテン語です。【フクラガエルの生物学】を参照してください。
acutirostris という種小名はラテン語です。
acutus = sharpと rostrum = beak もしくは snout という言葉から成り立っており、日本語だと『尖った嘴、尖った鼻口部』と言う意味です。
他のフクラガエルに比べて、鼻口部が少し尖っていることからついた名前です。
*種小名については【フクラガエル全20種類の名前リスト】をご参照ください
命名者はナタール大学の名誉教授・ John Charles Poyntonで、”Poynton, J. C. 1963. “Descriptions of southern African amphibians” (Annals of the Natal Museum 15: 319–332)と言う論文で記載されました。
英語名と和名
イチゴフクラガエルの英語名は、
Strawberry Rain Frog
Cape Short-headed Frog
などです。
Short-headは、属名そのまま英語に直した名前です。Cape地方に分布する短頭ガエルという意味ですね。
Strawberry Rain Frogは、赤みがかった地色と、黒いツブツブがイチゴのようなことからついた名前です。
今のところ、Breviceps acutirostris
に対応する和名はないと思われます。
このブログでは。このカエルの外見上の特徴をうまく表しているStrawberry Rain Frog をそのまま訳したイチゴフクラガエルをこの種の和名にあてています。
イチゴフクラガエルの基準標本
生き物の名前(学名)は、標本につけられます*。この名前を担っている標本をタイプ標本(担名タイプ)といいます。
Breviceps acutirostris という名前を担っている標本(ここではホロタイプ)は、
アルバニー博物館(グラハムズタウン・南アフリカ) (標本 AMG 5507)から、1993年にポートエリザベス博物館に移された標本 PEM A1540 です。
*学名と標本についてはこのページを参照してください
イチゴフクラガエルガエルの特徴
色と形
イチゴフクラガエルは他のフクラガエルと同様にずんぐりとして脚が短い体型をしています。
大きさはオスでおおよそ 25 mm、メスは 40 mm 程度です。
イチゴフクラガエルは他のフクラガエルに比べて鼻口部(口吻)が尖っているのが特徴と言われ、学名の由来になっています。
ただ僕はそれほど尖っているようには思えません。写真のような角度で見れば確かに尖っているのですが・・・。よっぽど多くのフクラガエルを見てきた人の印象なのでしょう。
皮膚は、アメフクラガエルのようにツルツルではなく、少しざらざらしています。
イチゴフクラガエルの特徴は色です。
背中は赤みがかった地色に小さな黒いイボがあります。これがイチゴのように見えるので、Strawberry の英語名がついています。
なお、赤い色は若い個体ほど強い印象があります。地色が赤ではなくクリーム色の個体の記録もあります。
目の下から腕あたりまで黒い帯模様があるフクラガエルが多いですが、イチゴフクラガエルはこの帯模様がないか、目立ちません。
イチゴフクラガエルのお腹の色は、紫色のベースに白い斑点が散りばめられているという特徴的なもので、このお腹の色だけで他の全てのフクラガエル種と区別できます。
鳴き声
イチゴフクラガエルの鳴き声は、やや高音のホイッスル音が連続したものです。
クワッ・クワッ・クワッ・クワッ・クワッという風に聞こえます。
僕は録音しなかったので興味がある方は、Frogs of Southern Afirica で聞いてみてください。(この図鑑を購入すると、ほぼ全種のふくらがえるの鳴き声が聞けます!)
同図鑑によれば、イチゴフクラガエルは、冬と春(6-10月)に、昼夜を問わず雨が降っている間と降った後に鳴くとされています。
僕が鳴き声を聞いたのは10月でしたが、確かに晴れている時は全くと言っていいほど鳴き声が聞こえませんでした。
また、イチゴフクラガエルは、土の表面、または低い植物や落ち葉の下の浅い窪みから鳴く。とされています。また、高い止まり木からもなくと言う記述もありますが、これはすこし眉つばものです。
僕が観察した限りでは、ほとんどが枯れ草や朽木の下から泣いていました。
繁殖時期と様式
イチゴフクラガエルの繁殖時期について記述がある文献は僕の知る限りではありません。
少なくとも、10月には抱接しているオスメスがいたので、春には生殖行動をしています。
それ以外の鳴き声が聞こえる期間もおそらく繁殖時期だと思われます。
IUCNレッドリストや Amphibian Web によれば、イチゴフクラガエルの繁殖様式は、「水に依存しない直接発生」となっています。
しかしこの記述には根拠がありません。おそらく他のフクラガエルと同じパターンで、間違った知見に基づいてよく調べずに書かれたものと思われます。
正しくはアメフクラガエルやヤブフクラガエルなどと同様に陸上でオタマジャクシになるパターンだと思われます。
生息地と分布域
分布域
イチゴフクラガエルの分布は南アフリカの南西部に限られています。具体的には、ケープ褶曲山脈の南西部(ランゲバーグ山脈とホッテントット・ホラント山脈)に沿って分布しています。
生息地
イチゴフクラガエルは、山地に住むカエルです。
アフロモンタンというアフリカ独特の気候区分の森と、その周りの山地フィンボス呼ばれる西州独特の灌木地に生息しています。
保全状況
イチゴフクラガエルは IUCN Red List では低危険種(Least Concern)にランクされています。
南アフリカ国内でも絶滅の危機にはないとされています。
イチゴフクラガエルと近い仲間
Nielsenら(2018)のDNAデータに基づく研究では、イチゴフクラガエルはヤミフクラガエルと一番近い仲間になります。
そしてイチゴフクラガエルとヤミフクラガエルはおよそ750 万年前に進化の道が別れたと推定されています。
確かにこの2種類はフクラガエルの中では似ていますし、分布域も近く、重複しているところもあります。(同じ分布域の中でも生活場所や性質は微妙に異なっています。)
まとめ
この記事ではイチゴガエルについて解説しました。
日本では話題になったことが全くないカエルで、ひょっとしたら日本語で語られたこと自体が初めてかもしれません。
実際のイチゴほど鮮やかではありませんが、フクラガエルにしては珍しく濃い赤い色をしていて、結構綺麗なカエルだと思います。
特に、お腹の模様は唯一無二ですね。
森に住んでいるので出会うには(サバクフクラなどと比べると)少しだけ難易度が高いかもしれませんが、治安は良いところに生息していますので、フクラガエルの中では探しやすい部類に入ると思います。
このブログでは引き続きフクラガエルの情報を発信していきます。
次の記事もご期待ください!